マブエの絵本日記

絵本を読んだこと、見たこと、思うことなどを綴ります。

絵本『ジャリおじさん』を読んだ日

『ジャリおじさん』を読む

ジャリおじさん|作:大竹伸朗|福音館書店

ジャリおじさん|作:大竹伸朗福音館書店(こちらで絵本の中ページが1シーン見れます)

いつものように、表紙を見せて2秒くらいの沈黙。

『ジャリおじさん』

丁寧に静かに、タイトルを読み上げた。

するとさっそく、目の前の子が「ジャリ~?おなかに砂利でも入れてるのかな」と言った。

子どもたちのジャリおじさんがもう動き出している!

絵をじゅうぶん見渡すことができるよう、間を取りながらページをめくっていった。

ジャリジャリ(こんにちは)

絵本には「ジャリジャリ」というセリフの上に「こんにちは」と小さくルビが振られている。

私は「こんにちは」とは読まずに、「ジャリジャリ」とだけ読んだ。

パオー(こんにちは)

あおゾウさんの言葉も「パオー」とだけ読んだ。

ドントコトン(こんにちは)

タイコおじさんの言葉もタイコの音のまま読んだ。

子どもたちの頭の上に「???」が浮かんでいる。

でも、ニヤニヤとしている。

ジャリおじさんは黄色い道を進んで行く。

ドーン

クライマックス。

もうひとりのジャリおじさんが現れる不思議さのピーク。

おじさん同士の対話がはじまる。

大丈夫だろうか、世界観についてきてるだろうか。

わけがわからなくなってないか?

読みながらヒヤヒヤしたけれど、子どもたちが集中を切らした様子はない。

まっすぐと視線を絵本に向けている。

そうゆうあなたもジャリおじさん?

鏡のように向き合っているジャリおじさんを見て、

「ネクタイだけ違う!」

蝶ネクタイの色が違うことに気づいた子がいた。

(ほんとだ。でもそこ!?突然現れるおじさんの不可思議さより、そこなんだ!!!)

その子には(よく気づいたね、そうだね!)って気持ちを込めた無言の目線だけをおくり、次のページへと読み進めた。

輝く星空、青い大きな神様。

私も子どもたちも、教室にいる皆が同じ絵を見つめているのがわかった。

そこから海までの道のり、子どもたちもジャリおじさんと一緒になって歩いているようだった。

読み終えた。

それから、もういちど蝶ネクタイのページを開いてみんなで確認した。

向き合う二人のネクタイは、赤い蝶ネクタイと、青い蝶ネクタイだった。

「あ!青い蝶ネクタイのほうは、青い神様だったんじゃないの?!」と言う子がいた。

「あ~(納得する子どもたち)」

私は一体何を恐れていたのだろう。

キョトンとされるかもしれない。

へんな空気になるかもしれない。

この子たちにとっては、まったく心配なかった。

私の知っているジャリおじさんを押し付けるどころか、私の方が新しいジャリおじさんに出会わせてもらった。

子どもの前で読んでみて、わかったこと

子どもの前で読んでみて、わかったことがある。

「ジャリおじさん」は子どもと出会ったら、その世界を目の前の子とゼロからつくっていく。

世界観を壊さないか?という読む前の葛藤や不安は、絵本に敬意を払う意味で私にとっては重要なプロセスだったかもしれない。

でも今振り返ると、その葛藤はおこがましかった。

私はキッカケにすぎなかった。

子どもたちは私の想像以上にタフだった。

読んで良かった。

楽しかった!!!

 

***

 

これは、去年の9月(当時の小学2年生)に読み聞かせをした様子です。

とんちゃんの読み聞かせボランティア講座を受けたあと、満を持して『ジャリおじさん』を子どもたちに読んだのでした。

私のジャリおじさんを読むまでの葛藤と、それを克服した講座の様子は、【読み聞かせボランティア講座】どの本を読むか?をご覧ください。

 

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