絵本『すきになったら』を小学4年生に読んだら
魅せられて
「ではよろしくお願いします!」先生が元気よく去っていく。
先生がいなくなると、教室がふわっとする。
私は椅子に座った。
そしていつものように、1冊目の絵本を膝の上に構えてみた。
膝の上に置かれた絵本に気づいた子たちが黙りだす。
黒い背景にたたずむ少女の表紙。
のんびりランドセルをしまっていた子もタイトルを見て手が止まる。
空気が変わった。
これまでで最速の静まりだったかもしれない。
すきになったら
表紙を少し持ち上げて、ゆっくり読んだ。
たいていここで、話の内容を推測して誰かしら声をあげるのだけど、皆だまっている。
(あれ?なにも言わないの?)
ほんの一瞬、いつもの元気なツッコミがないことに不安になった。
けれど、その不安は、ほんの一瞬で消えた。
妙に真剣な顔をしている。
まっすぐな静けさが「はやく、次をめくれ!」と聞こえた。
すきになったら
しりたくなる
このときの、耳と目を済ます感じ。
子どもの様子をどう表現したらよいだろう。
スーッと絵本の中に入ってくる静けさとはちょっと違う。
ちょっと戸惑いながら、興味深々な感じ。
子どもたちは大人の誰かの日記を盗み読んでいるような感じなのだろうか。
ぼくらに聞かせてよいのですか?と体勢をひくような(でも心は前のめりな)気配を感じた。
子どもたちはセリフを茶化すことなく、見つめていた。
私がページめくりにまごついて、2枚重なったページをはがそうとしている間も無言で待っている。
妙に、かしこまった空気が流れている。
重なっていたページが開く。
絵本をようやく広げ、そこに書かれた言葉を声にした。
子どもたちの神妙な顔。
わたしが初めてジュディ・オングが両手を広げて「おんなは うみぃ〜♪」と歌っているのを見たときは、きっとこんな顔をしていたんじゃないだろうか。
(なにこれ、可愛い。そんな真剣に聞いてくれちゃうんだ!)
そして最後の文章を読む。
すきになったら
わたしの…
「へぇ・・・」
「え?」
ようやく声をもらす子どもたち。
もう1ページめくる。
絵だけを黙って見せる。
「あー!」
「そうゆうこと?!」
「どうゆうこと!?」
その声には、いつものような絵本の世界に着地したような安心感があった。
私の正面で、まだ状況が飲み込めていない様子の男子と目があった。
私を見て、驚いたような笑ったような顔で「ヤバイな」と言った。
裏表紙とつながるようにもう一度、表紙を見せる。
「すきになったら でした。」と言って、本を膝の上に倒した。
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